お客さまへのお願い(必ずご一読ください)

始めに、「家とは何か?」を考えてみましょう。

建築設計事務所専用のエクセルフォーム「アーキシート」シリーズの開発者であり、実績40年以上一級建築士として活動してきた栗原健一氏が「失敗しない家造り」と建築に関する役立つ情報を発信するコラムです。
建築よろず相談会の相談員としても参加してきた同氏が住宅トラブルの実情などを踏まえて建築主さまにお伝えしたいメッセージを掲載します。

目次

家を持ちたいと考えはじめたら

「いつかは自分の家を持ってみたい!」そう考えている方は多いのではないでしょうか?
いろいろと価値観が多様化した現在でも「いつかはマイホームを!」と夢見てる人も少なくはないと思います。
マイホームの夢が叶うかどうか?
希望どおりの「家」が持てるかどうか?
家造りに対する想いも事情も人それぞれに違いはあると思います。

もし、いよいよその夢が叶いそうになったら、「リビングはこうしよう」とか「和室は何畳がよい」とか、具体的な計画に着手する前に一度、自分や家族にとって「家」とは何であるのか?ということを考えてみてください。

「考えるまでも無い!家は家だ!」と言われるかもわかりませんが、建築設計を生業としている者からすると、この哲学(基本コンセプト)が今後の家造りに重要な意味を持ってくるのです。

「住宅はシェルターである」という考え方

私が建築士を目指して学んでいた建築系大学での授業から「住宅は、まずはシェルターである」という考え方を学びました。
家は、自分と家族と財産を、地震、火災、犯罪などあらゆる外的脅威から守り、安全を確保しなくてはならないとの考えです。

過日、学生時代に学んだ一つの考え方ではありますが、私は今もこのことを片時も忘れず念頭に置いています。
そして、甚大な被害を引き起こした阪神・淡路大震災(1995年1月17日)よりも以前から、耐震・耐火性、防犯性を確保するための構造重視の基本的な設計ポリシーを持ち続けてきました。
東日本大震災(2011年3月11日)以後は、その思いを更に強くしています。

ですが、シェルターでありさえすればよいというわけではありません。
外的脅威からは守りたい。しかし、その一方で閉鎖的になりすぎてもあまりいい結果にはならないでしょう。
建物を建てるその立地環境にもよりますが、開放性があり近隣との良好なコミュニケーションを保つことも重要です。
シェルター的要素が、中で暮らす人々の情緒・精神にあたえる影響も当然考慮しなくてはなりません。

この相反する要求を完全に解決するような計画を実施することはとても難しく、ある意味非現実的と言わざるを得ないかもしれません。
そこで、住まう方がどこに重きを置くかということが大事になってくるのです。
どのような性格で、どのような基本性能の家にするかを、まず検討してください。

実施計画の前に、まずは基本コンセプトを検討してみる

住まう方がどこに重きを置くかという基本コンセプトが決まれば、それにふさわしい立地や建物の規模・構造も絞られてきます。
特に構造は最初から、木造だ、鉄筋コンクリート造だと決め付けるのではなく、あなたの考える住宅にとって何が最も適切なのか?ということを十分に検討してから取捨選択し決定することが重要かと思います。

もし、あなたがシェルター的性格を重視するなら、構造は耐震耐火性を確保しやすい鉄骨造やコンクリート構造を選択し、外観なども凝ったデザインよりシンプルな形状にするとよいでしょう。
外まわりは防犯上からやや閉鎖的にし、中庭を設けそこには開放的な窓を配置しそこから採光や通風を確保します。

一方、伝統的な「和」の世界に心の安らぎを求めたいというようなコンセプトに決めたとしたならば、木造を選択し、木の素材を生かした内外装で計画します。
広い敷地に平屋建てで計画できれば最高の贅沢です。
木造でも、水廻りはコンクリート造で耐久性を確保することも可能です。

この他にも、コンセプトによって上記以外の様々な計画が導き出されます。
あなたも、あなたとその家族にとってどのような「家」であるべきかを、じっくりと考えてみてください。

法律的制約も考慮して計画する必要が求められます

コンセプトが決まったらご自身の考える理想に沿ってより具体的な計画を進めていきます。
その際に、更に重要となる要素があります。
それは、建築物を建てる上での法律的な規制や制限が設けられているということです。
日本では、建築基準法のほか数々の法規で、言葉はよくないですがある意味がんじがらめにされています。
過密な都会での設計では、この法的制限により構造も形態もほぼ決まってしまうという事例もあります。
建主にとっては思い通りにならず、腹立たしく思ってしまうこともあるかもしれません。
しかし、これらの法律や規制は意味があって決まっていることなのです。
耐震の問題であったり、日照権の問題であったり、その街の景観の問題であったり、さまざまな過去の経緯や経験から決められていることが殆どです。
法律に違反したような建物は当然ながら建てることは出来ませんし、無視して建ててしまうと罰せられますので従うしかありません。

家や建物を建てるためには、建主のみなさんが決めたコンセプトを尊重しながら、法的な規制を遵守しながら、予算も勘案して、多くの調整を積み重ねながら計画を進めて行く必要があります。
それらの調整する事柄などをわかりやすく丁寧に説明してくれる設計事務所や建築業者を選定することも大切ですので、自らいろいろな情報を収集して判断することも重要なことと言えます。

当記事は、一級建築士 栗原健一氏が各所で発表してきた記事などをもとに同氏の許可を得て掲載しております。

筆者紹介
筆者:一級建築士 栗原健一

Web:一級建築士事務所 栗原健一建築事務所
建築関連職歴:

  • 一般社団法人日本建築士事務所協会連合会
    業務規程作成小委員会 副委員長
  • 一般社団法人日本建築士事務所協会連合会
    大臣指定建築士事務所管理講習会講師
  • 公益社団法人日本建築士会連合会
    工事監理強化対策検討特別委員会 委員
  • 財団法人経済調査会「一級建築建築士製図試験参考書」執筆
    1990年~1994年
  • 月刊「建築知識」『RC造建物の工事監理』連載執筆
    1995年~1997年

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