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住宅用の土地を探す際の注意点について

建築設計事務所専用のエクセルフォーム「アーキシート」シリーズの開発者であり、実績40年以上一級建築士として活動してきた栗原健一氏が「失敗しない家造り」と建築に関する役立つ情報を発信するコラムです。
建築よろず相談会の相談員としても参加してきた同氏が住宅トラブルの実情などを踏まえて建築主さまにお伝えしたいメッセージを掲載します。

目次

建築基準法に定められた「接道義務」とは?

住宅用に限らず、一般的な市街地において建築物を建てようとする土地は、必ず「道路」に接していなければならないことが建築基準法に定められています。
これを接道義務(接道要件、接道条件)などと言いますが、道路は、火災が起きたときの避難経路として、また採光や、通風など生活環境にも影響するものであることから条件が定められているのです。

ここでいう「道路」とは建築基準法で定義されたものを指します。
一般的に道路と捉えられている道でも建築基準法上の道路に該当しないことがあります。
実際に人や車が通行できているという見た目だけでは判断できません。
建築基準法でいう道路は、次の条件のいずれかに該当するものでなければなりません。

道路幅員が4メートル以上の道路
幅員が4メートル以上の道路のうち、下記のものを建築基準法上の道路として取り扱います。

  • 道路法による道路(市道、県道、国道等など)
  • 都市計画法や土地区画整理事業などの法律に基づいて築造された道路
  • 建築基準法施行時以前より存在する道路
  • 法に基づき2年以内に事業執行がされるものとして、特定行政庁が指定した道路
  • 土地所有者が築造し、特定行政庁から位置の指定を受けた道路

道路幅員4メートル未満の道路

  • 道路幅員が4メートルに満たない場合であっても、一定の基準を満たすもの(建築基準法第42条2項による、「2項道路」と呼ばれています)は、建築基準法の道路として取り扱われる場合があります。

一般の方がこの条件について理解し判断することは難しいかと思われますので、新築や建て替えを計画される際には、その土地の管轄行政(市役所や区役所など)の建築課等に行って建築基準法上の接道の可否を訪ねた方がよいでしょう。

併せて、建物を建てる場合には、原則、建築基準法上で定められた道路に敷地が2メートル以上接していなければなりません。
地域によっては条例などで、より厳しい長さの規定を設けている場合もあります。

なお、「建築基準法上の道路扱い」と道路部分の「所有権」とは直接は関係ありません。
所有権が民間の道路を「私道」と言いますが、「私道」でもこの「建築基準法上の道路」として扱われているケースもあります。
例として、「位置指定道路」や「42条2項道路」などに多くあります。

接道義務(接道要件、接道条件)を満たしていない敷地例

一例として、接道義務(接道要件、接道条件)を満たしていないケースを見てみましょう。

接道要件を満たしていない敷地の例
黒い部分は敷地の一部ではなく、通行はできますが建築基準法上の道路ではありません。

公道までの通路(黒い部分)が、人が通行できる場合であっても建築基準法で定める道路扱いとなっていなければ接道義務を満たさないことになります。
東京都内など都市部ではこのような土地が多く見受けられます。
住宅などの建て替えを希望する敷地所有者の悩みとなっていることも少なくありません。
このような土地は価格が相場に比べ安価に設定されていることがありますが、リスクも大きいと言えます。
仮に、公道までの通路(黒い部分)が敷地の一部で、幅が2m以上あり、公道までの長さ(距離)が一定の範囲であれば、接道義務を満たすこができます。

土地を新規に購入する人も、すでに土地を所有している人も接道義務の確認を!

これから住宅用の土地を探そうとしているみなさんにとって数々の注意すべき点がありますが、もっとも注意を払わなければならないのがこの「接道義務」です。

また、既に住宅と土地を所有している方にとっても土地の価値を左右する問題となりますので無関係ではありません。
現在所有している土地にすでに家が建っているからと言っても、接道義務の要件(接道要件)が満たされているとは限りません。
もし、接道義務の要件(接道要件)を満たしていなければ、合法的に建て替えが出来ないケースがあります。
土地や家を売却しようとしても評価額は相当に低くなることが予想されます。
土地を新規に購入される場合は必ず確認する必要がありますが、現在すでに土地を所有されている方も対象の土地について接道義務の要件(接道要件)を確認しておくことをおすすめします。

建築確認申請書の診査が通らない

40年以上にわたって建築士事務所の業務に携わってきた私ですが、この接道義務の要件(接道要件)が満たされていないことに苦しまれた建築主(施主)さんを数多く見てきました。
親から土地と家を相続したけど、建物の築年数も経っていて古かったので新しく建て替えしたい…なのに、接道義務の要件を満たしていないので建て替えできない。そのようなケースをお聞きしたこともあります。
そして、建築確認申請業務を依頼される私たち建築士も建築主(施主)の皆さん同様に悩み苦労してきました。

建物の新築、建て替え、増築などを実施する場合、建築確認申請書を行政や審査機関に提出し審査を受けることになりますが、この接道義務を満たしていなければ、審査は通らず確認済証は公布されません。

新規に土地を購入される際の絶対条件である接道義務の要件(接道要件)の確認方法ですが、その土地の管轄行政(市役所や区役所など)の担当窓口で土地の所在地を示して「この土地に家が建てられますか?」と、問い合わせ、相談をされるのがいいかと思います。
大抵の場合、道路種別ごとに色分け分類された地図「道路台帳」を見せてもらえるかと思いますので、ご自身の目で確認しておくことをおすすめします。

ちなみに、すでに所有している土地が接道義務を満たしていない場合、既存の建物を解体して更地にしてしまった後では合法的な建築は無理となってしまいますが、柱や梁等の構造体の過半をそのまま残しておいて改修をするという方法も考えられます。
接道義務の要件(接道要件)を満たしていなくてお困りの場合は、信頼のできる建築設計事務所や建築業者に相談をしてみてください。

当記事は、一級建築士 栗原健一氏が各所で発表してきた記事などをもとに同氏の許可を得て掲載しております。

筆者紹介
筆者:一級建築士 栗原健一

Web:一級建築士事務所 栗原健一建築事務所
建築関連職歴:

  • 一般社団法人日本建築士事務所協会連合会
    業務規程作成小委員会 副委員長
  • 一般社団法人日本建築士事務所協会連合会
    大臣指定建築士事務所管理講習会講師
  • 公益社団法人日本建築士会連合会
    工事監理強化対策検討特別委員会 委員
  • 財団法人経済調査会「一級建築建築士製図試験参考書」執筆
    1990年~1994年
  • 月刊「建築知識」『RC造建物の工事監理』連載執筆
    1995年~1997年

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